開催日時:平成29年3月25日(土)
開催場所:神奈川県立生命の星・地球博物館 1F 東側講義室
参加者:19名(うち招待講演者1名)
記念すべき日本地下生菌研究会の第一回総会・講演会が神奈川県立生命の星・地球博物館で開催されました。
総会では会長の折原貴道氏からの挨拶の後、昨年の会計や菌類観察会などの報告がありました。また、今年の予定として観察会の候補地や会報の発行、ウェブページの内容についての議論がなされました。決めるべき項目が多かったためやや時間的に押してしまいましたが、今後の活動内容についてはほぼ合意が得られたと思います。
講演会では基調講演と一般講演、スライドショーが行われました。基調講演ではオーストラリアの菌学者であるElizabeth (Biz) Sheedy博士をお招きし、オーストラリアの地下生菌の年代推定についてお話しいただきました。オーストラリアの地上生キノコが地下生化した年代を推定し、地上が乾燥化した年代と照らし合わせることによって、「地上生のキノコが地下生菌に進化したのは乾燥から身を守るため」という有名な仮説を検証した内容で、第一回の講演会にふさわしい非常に興味深い内容でした。英語での発表でしたが写真をふんだんに盛り込んだスライドや和訳した要旨集によって、英語が苦手な人でもだいたいの内容は理解できたのではないかと思います。また、今回の発表内容は昨年、学術雑誌Australian Systematic Botanyに掲載されております。
会員からは一般講演6題、スライドショー2題の発表がありました。担子菌や子嚢菌、グロムス菌に含まれる地下生菌に関する研究発表や話題提供があり、各自がお菓子や飲み物を手に取りながら終始和やかに進行しました。
講演会後は小田原駅周辺に移動し、有志で懇親会が開かれ、プロやアマチュア研究者、発表者や一般参加者も分け隔てなくざっくばらんに語らい、交流を深めました。最後は一同で記念撮影を行い、本研究会と日本の地下生菌研究の発展を誓い、盛況のうちに終了しました。
“Dating the emergence of truffle-like fungi in Australia, by using an augmented meta-analysis” (和訳:オーストラリア産地下生菌の年代推定)
Dr. Elizabeth Sheedy (日本学術振興会・国立科学博物館)
「アーバスキュラー菌根菌胞子果を食べるコガネムシの発見とその生態」
〇日暮卓志(千葉県立中央博物館)・棚橋薫彦(産業技術総合研究所)
「Glomus microcarpum の分子系統学的位置」
〇大和政秀(千葉大学教育学部)・大前宗之(株式会社 北研)・折原貴道(神奈川県立生命の星・地球博物館)
「栃木県産地下生子嚢菌類」
〇大前宗之(株式会社 北研)・折原貴道(神奈川県立生命の星・地球博物館)
「初めて知った地下生菌というキノコたち」
〇細野天智(宇都宮大学農学部)
「俺も地下生菌だ!Roesleria」
〇中島稔(神奈川キノコの会)
「日本産タンポタケには宿主となるツチダンゴ属種が異なる 2 タイプが含まれる」
〇山本航平(信州大学大学院総合工学系研究科)
「日本きのこ図版掲載の「シマショウロ」とイグチ科地下生菌Turmalinea mesomorpha Oriharaとの関係および和名使用について」
〇折原貴道(神奈川県立生命の星・地球博物館)・中島稔(神奈川県博菌類ボランティア)
「ここ数年間に私が巻き込まれた地下生菌研究」
〇保坂健太郎(国立科学博物館)