第4回 日本地下生菌研究会 観察会報告

日程:2019年9月21日(土)〜23日(月)
開催場所:北海道 野幌森林公園(江別市、札幌市)、厚別南緑地(札幌市)

21日(土)

 集合場所である野幌森林公園の駐車場では、折原貴道会長により約100年前に野幌森林公園で記載された地下生菌についての資料が配布され、今回の観察会の意義について説明されました。探索は4つのグループに分かれ、それぞれが別々のルートで行いました。
 

 探索を初めて間もなくステファノスポラ属の一種(Stephanospora sp.)が見つかりました!すぐそばには本属に非常に近縁なLindtneria 属の一種も発生しています。似ても似つかぬ姿ですが、胞子の形などはそっくりなのだそうです。
 

 この周辺では他にもケカビ門アツギケカビ目に含まれる地下生菌Jimgerdemannia の一種や、コイシタケの仲間、とても珍しいホシミノタマタケ属Mutabiles 亜属の一種などが見つかりました。地下生菌を探して落ち葉を捲っていると、美しいByssocorticium 属の一種を発見しました。このような見た目ですが、れっきとした菌根菌です。個人的にかなり好きな菌類なので地下生菌そっちのけで写真を撮ってしまいました。

 採集品の講評を折原会長がされた後、後、初日は解散となりました。

22日(日)

 野幌森林公園の昨日とは別の駐車場に集合し、複数のグループに分かれて周辺の探索を行いました。

 探索を始めると早速ヒステランギウム属の一種(Hysterangium sp.)や、ステファノスポラ属の一種(Stephanospora sp.)などが見つかりましたが、どうにも自分では見つけられません。手慰みに枝でホコリタケの仲間にちょっかいを出していると、前の集団が声を上げるのが聞こえてきました。枝を放り投げて大急ぎで見に行くと、巨木の根の周辺に大きなアミメシマショウロ(Gautieria morchelliformis)がゴロゴロと転がっていました。以前から見てみたかった種類なのですが、自力で見つけられなかったので嬉しいやら悔しいやら複雑で、うっかり写真を撮るのを忘れていました。
 しばらく進んだ場所にある崖では、クロツチダンゴ(Elahomyces miyabeanus)と思われる地下生菌が続々と発見されました!本種は今回の観察会の目的の一つで、1921年に野幌森林公園で記載されてから約100年間採集記録が無い幻の地下生菌です。あまり新鮮な状態ではありませんでしたが、とても貴重な発見だと思います。

 軽い足取りで集合場所に戻ると、何やら他のグループの方々が花壇に集まっていました。何かあるのかと横から覗き込んでみると、なんと花壇からショウロ属の一種(Rhizopogon sp.)が発生していました。花壇には海外のマツの仲間が植えられていたので、恐らく木と共にやってきた海外のショウロなのだろうとの事でした。

 午後は森林公園内の別地点に移り探索を行いました。ここでは奥に進むグループと入り口付近を探索するグループの2つに分かれて探索を行いました。入口付近にある谷に目を付けていたので、僕は入口付近を探索するグループに加わりました。
 駐車場から数分ほど歩くと目星を付けていた地点に到着しました。早速降りて探索を始めると、他の方々がイッポンシメジ属の一種(Entoloma sp.)やアズキタケ属の一種(Pachyphlodes sp.)などを発見しました。僕も自力発見を目指して探索を続けると、ようやく4 mmほどのツチダンゴ属の一種(Elaphomyces sp.)を見つけることができました。
 駐車場に戻ってからも、奥に進んだグループの方々が見つけられたホシミノタマタケ属の一種(Octaviania sp.)の撮影などを時間ぎりぎりまで続けました。
 
 

 その後、北海道大学で情報交換会が行われ、折原会長や大前宗之氏、佐々木廣海氏らの発表がありました。

23日(月)

 最終日は野幌森林公園近くの厚別南緑地で探索を行いました。ミズナラやクリが主体の広葉樹林で、湿度にも恵まれた素晴らしいフィールドです。
 朝から雨が降り続いていたので雨合羽や傘を差しながらの探索となりましたが、ステファノスポラ属の一種(Stephanospora sp.)や、ヒメノガステル属の一種(Hymenogaster sp.)など多数の地下生菌が採集されました。
 最後は折原会長によって採集品の講評がなされ、第4回観察会は解散となりました。

 

 本観察会を行うにあたって、観察地における採集の許可申請や北海道大学内の教室や実験室の利用など、多大なるご協力を頂いた北海道大学 玉井裕教授およびその研究室の皆様、北海道きのこの会の皆様にお礼申し上げます。

(畠山颯太)